『溺れるナイフ』を視聴した感想

ネタバレ含みます!かつ映画のあらすじなどはなく、ただの感想です。あしからず。

 

 

一昨年話題になっていた映画、『溺れるナイフ』がU-NEXTで無料視聴できるようになっていたので、とりあえず見ました。この映画、菅田将暉小松菜奈というまさに「サブカル若手俳優揃えてきました!」って感じがしてちょっと見るのに抵抗あったんですけど(あまりにもミーハーすぎるから)、予告編がすっごい綺麗だったのが印象的で。海とか山とかの自然物が映像というよりはまるで漫画のように撮影されてて、原作のもつ雰囲気をちゃんと出そうとしてるのが伝わってきましたよね。だから本編も面白いだろうな−と思ってたんですけど。

 

ですけどね。

 

たまーにある、予告編が一番出来がいいってパターンでした。いや、少女漫画を文学に押し上げようとする努力はすっごい垣間見れたんですよ。こんな今旬の二人を起用して若者世代をばっちし狙ってるかと思いきやそれでは終わらせたくないっていうのは感じました。感じましたとも。撮り方も邦画っぽくてワンシーンワンシーンに説明がないんですよね。その点は他の少女漫画を実写化したものとは一線を画していたと思います。

 

個人的な感想としてはそれでも、荒削りすぎました。ストーリーよりも先にこういうシーンを撮りたい、っていうのが先行しすぎていて、映像は文句なしに綺麗なんだけど、まとまりがない・・・。それを若者のもがく姿だっていうのは簡単なんですけど・・この作品をそう認めてしまったらリバーズ・エッジとかが導こうとしてる暗鬱さを否定してしまうことになると思うんです。だからこの作品は少女漫画の実写化としか言うことができませんでした。

 

でも、そう捉えるととても面白かったと思います!起承転結も人間が持つ嫉妬も羨望も全て詰まっていたのではないかな、と。私的に一番怖いのはカナでしたね。あの子、絶対将来モンスターペアレントになるわ・・・

 

意外だったのは結末。決してハッピーエンドとは言えず、だからナツメにとってコウちゃんは恋人でも彼氏でもましてや元彼でもなくて、神様でしかないんですよね。信仰し、常にその人の影を感じながら生きて、そして見てくれている。友人への愛も恋人としての愛あるようでその全部がない。あるのは唯一の信仰心で、それだけで足りてしまう。

 

ナツミにとってコウちゃんは神様だけど、多分コウちゃんにとってナツメは神様ではなくてただ単に好きで手に入れたいものだったんでしょうね。だから一緒に生きていくことはできなかった。離れることでようやく、ナツメの神様になれたんじゃないかな。芸能界という、画面の先にいるナツメを実感して、それでやっとコウちゃんはナツメに背中を見せることができるし、神様になれた。

 

大友はある意味、その点において二人の間には絶対に入れない。だって彼はナツメの元彼で、コウちゃんの幼馴染。どっちも神様にはできなかった。映画の冒頭に神様を信じるか?みたいな会話がありましたが、一番信仰がないのは実は大友なのかもしれませんね。